20日目 「森」を見て「木」を見ず
「木を見て森を見ず」ということわざがある。
「個別のことにこだわりすぎて、本質や全体を見通さないこと」という意味で、
「ことわざ」というだけあって陥りがちな思考の悪いクセとして知られている。
森をみる、というのは全体の傾向を捉えること。森とはたくさんの木をおしなべて見るとわかってくるモノといえる。
木の重さは一本一本異なるが、森全体で見れば一本当たり平均どれくらいかわかる。「目の前の木が500kg」というのがわかっただけで、「森全部が500kgの木でできている」とは誰も思わない。
しかしながら、はじめから森を眺めていると見落としてしまうものがあるように思う。
「生物は子孫を残して繁栄してきた。だからあなたが子どもを持とうとしないのはおかしい。」という考えをまれに人から耳にする。
生物という「森」全体を見れば、子孫を残すように動いてきた歴史があるのは確かかもしれない。
一方で「木」である個体ごとではどうかというと、どんな動物にも一定の割合で子孫を残そうとしない個体が現れるそうだ。
全体の傾向として子孫を残す個体が多いだけで、個体全部がそうしたいと思っているわけではない。ごく簡単な話だ。
森だけを眺めることで、見落とすのは、木一つ一つの形や重さが全部違っていることだ。木が森を形作っていることを、忘れないようにしたい。