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【まい投2020-79日目】継ぎはぎの地図とパッチ

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地図を作るのに必要なのが測量だ。

測量によって直接測っているのは線分の「距離」、「基準線に対する角度」、「高低差」である。線分だから測量士は大抵2人1組で仕事をしている。彼らは高々数十メートル離れた2点の「距離・角度・高低差」の測定値を、地図が埋まるくらいの数積み重ねて地図を作っているのである。すごい・・・。

 

狭い土地の場合は「平面測量」という方法で測量でき、たとえばひとつの市の中の小さな自治体の地図はこれで作られることが多いし、土地の登記に必要な広さならこの方法で賄える。(それでも大変な作業量なのだが)これが市全体とか県単位の地図だと、とても2人1組で測量して回れないほどになる。どうしても、Aの組とBの組が作った地図を合わせてA+Bの大きな地図を作る必要が出てくる。

 

さて、A組の測量した池からB組の測量した山までの標高差を知りたいとしよう。

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厳密に言えば、A組の測量方法とB組の測量方法は(測量士のクセレベルの細かさで)異なる。Aさんは以下の測量が得意だが山の方は苦手だったりするかもしれない。A範囲の地図とBの範囲の地図をそのままぴったり合わせて正しい地図になるとは限らない。

(実際には測量士自体が国家資格で、そんなことはほとんど起こらないようになっている)

地図をひとつの基準に合わせるためには、AならBの土地をこうやって測量するだろうという変換がわかれば良い。つまりBの測量をAの方法に翻訳するための「辞書」が必要になる。この辞書はAの地図とBの地図の「パッチ(つぎあて)」としてはたらく。

 

ここからはたとえ話。

学問とか哲学とかで唱えられる「理論」「世界観」には、得意分野と不得意分野があると僕は思っている。

たとえば物理の力学での話。我々の生きるスケールでは「ニュートン(古典)力学」で考えるとうまくいくことがほとんどだ。ところが10^-10 mもの小さい世界になるとニュートン力学でうまく説明できない現象がたくさん出てくる。これを説明できるのが量子力学である。逆に途方もなく大きい距離スケールでは相対性理論で説明するとうまくいく。

それぞれ違う3つの理論で3つのスケールでの力学が考えられるのであるが、それをひとつの尺度で説明するためには、

量子力学ニュートン力学相対性理論

の間を継ぎ合わせる「パッチ」があれば便利である。

 

別に学問に限らず、一人一人の哲学=平たく言えば「考え方の違い」にも「パッチ」があれば便利なのに、と思う。

考え方や伝え方に違いはあれど、測量が得意な範囲が違うように、自分には測れない世界をBさんが知っていたりするかもしれないのである。

翻訳の手引きとなる「パッチ」があれば、Bさんの言うことを誤解なく理解できるし、彼にしかできないことをリスペクトしやすいよにな、と思ってやまない。

そしておそらくその「パッチ」は、雑談だったり共通の趣味だったり、共有する価値観だったりするんだろうなとうっすら思っている。