かわじじい
昔昔、山あいの山村に独り身の老父が居りました
老父は晴れた日には川にいる魚をとり、雨が上がったら川のそうじをしていました
となり町まで川を上っていそうじをていたので
となり町では「かわじじい」と呼ばれていました
となり町の人たちは勝手に掃除をしているかわじじいに感謝することはなく
勝手に土地に入り、落ちたものを拾っていく無法者というあつかいでした
とても台風の多い年のことでした
季節が変わってすぐに来た台風がとなり町をおそいました
外に置いてあった農具が飛んだ家があるほどでした
夜が明けて空が晴れると、となり町の岸にはかわじじいがいました
となり町の人たちは、かわじじいと、川まで飛ばされた農具を見て言いました
「農具をとりにきたんだろう」「俺たちが片付けてから来てくれ」「今は帰ってくれ」
みんなも物を盗られるのはいやでした
みんなが取り囲むと、かわじじいは去りました
かわじじいは二度ととなり町に来ることはありませんでした
一日置いて、また台風がやってきました
台風は大雨を降らせ、土砂を川に流し、各地の川をあふれさせ村を沈めましたが
台風の後、となり町にはいつも通りの川が流れていました
おしまい