置いてけぼりのSくん
「唸ってるねSくん、何かあったの?便秘?」
悩みが顔に出ていたのか、Oが声をかけてきた。
『からかうなよ』
「まあまあ。話してみなよ、君と僕の仲じゃないか」
『・・・オレ、実は好きな人がいるんだけど』
「それはよかったじゃない。じゃあ、告白の日取りで悩んでたのかい」
『そんなに単純な話なら悩んでないよ。いいかい、オレが好きな人ってのはAさんなんだ。半年前からね』
「そんな気はしてた」
『実はさ、ゆうべBさんからメッセージがあって・・・付き合って欲しいって』
「返事はしたのかい?」
『いや・・・』
「Aさんと付き合えたら確かに素敵だけど、あの人、別に好きな人がいるんじゃなかったっけ?」
『うん、でも・・・諦めるのがこわくて』
「そうは言うけど、Bさんへの返事に時間がかかってるってことは、そっちの方も気になってるんじゃないの?」
『恥ずかしながらそうなんだ・・・。最低だよな、オレ』
「別に最低だとは思わないけど。でもさ、AさんはSくんの想いを知らないんでしょ?客観的に考えて、君がBさんの告白を受けるのが丸くおさまるんじゃないの」
『確かに・・・でもオレは』
「Aさんに想いを伝えて断られたらさ、告白を受けたAさん、君に告白したBさん、そして何より君が傷つくよね。たとえAさんにOK貰ったとしてもBさんは悲しむじゃないか」
『・・・そうかもしれないね』
「Aさん、Bさん、そして君。関係者全員の幸福度を比べたら、Bさんを選ぶのが正しいと思うよ。」
『・・・そうだよね。相談にのってくれてありがとう、O』
「いいんだよ。誰に対してもやさしいけど、そのせいで意思決定をハッキリできない。そんな君の頭を整理してあげるのが、ずっと一緒に過ごしてきた僕の役目だからね。」
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・・・夢か。
Bさんに返事しなきゃ・・・。
Sくんには悪いことしたなあ・・・でも正しいんだもんな。客観的に考えて。
・・・なんで泣いてるんだろ、僕。